令和4年度 東京大学工学部編入学試験合格体験記

はじめまして、mitです。
このたび令和4年度の東大編入試験に合格したので体験記を書きます。

ここでは私の受験勉強開始から合格までの過ごし方について主に書いていますので、使った参考書や具体的な勉強内容に関してはこちら高専から東大編入!)をご覧いただければと思います。

 

自己紹介

  • 奈良高専電子制御工学科
  • 席次:1~3年は1位、4年は2位(材力のテストで50点をとってしまったゴミ)
  • TOEIC:965(L495、R470)
  • 併願校:電通大(すべり止め)、東北大(化学の練習)、東工大(第2志望)
  • 高専ロボコンOB

編入のきっかけ

大学編入高専入学時点で決めていました。すぐには就職したくなかったのもありますが、もともと勉強は好きなので大学には行くつもりでした。どちらかといえば勉強が苦ではないという方が正しいかもしれません。

話がそれますが、私は小6から中学卒業までシンガポールに住んでいまして、日本人向け進学塾(駿〇や早〇アカなどいくつかあります)の一つに通っていました。そこで地獄のような(塾の先生ごめんなさい)受験生活を過ごしたので勉強に対する耐性がついたのかもしれません。ちなみに高専は推薦で、記念受験で受けた灘高は落ちました。

東大を選んだ理由は、後にも述べますが目標は高く持ちたかったからというのと、高専ロボコンに参加していたこともあり学生ロボコン界で圧倒的な強さを誇るRoboTechへの憧れがありました。
またロボコンでは回路(よわいけど)と制御を担当していて機械に弱かったので、機械と情報を両方勉強したいと思い機械情報工学科を選びました。

余談ですが私には双子の弟がいまして、高校(彼は灘に受かりました)から大学入試を乗り越えて東大生になりました。一浪ですが。彼の存在も東大編入を志すきっかけになりました。私も合格したので東大生ツインズ爆誕です。しかも片方編入生って結構話題性高くないですか?(うるさい)

合格までの生活

1年~3年冬

ロボコンに時間を費やしていました。それ以外はほぼ何もしていません。自分語りになりますが、高専ロボコン2019で近畿地区大会優勝、全国大会ベスト4・ロボコン大賞を獲得しました。私が担当した自動機の制御が評価されてうれしく思いました。それと、こじるりの隣でテレビカメラに手を振りました。芸能人のオーラを感じました。何もかも貴重な経験でした。

このころは授業もそこそこ聞いていたので、首席をキープできました。勉強はテスト前の2週間集中してやりました。3年冬まで寮にいたので、友達に教える機会も多くありました。やっぱり教えることが一番学びになります。
3年春のTOEICは、自分の実力が知りたかったので特に対策せずに受けました。880点と思った以上に取れたので自信になりました。

どうでもいいですが、うちの寮の1年生は先輩が視界に入ったら挨拶(これは普通ですが)、いったん視界から外れてまた現れたらたとえ10秒前に挨拶したとしても再度挨拶。とにかく挨拶。他の高専でもこんなところありますか?体育会系でもなんでもないのに謎です。こんなこと書いたらキレられそう…。最近はマスクをしてることもあってルールが緩くなってるらしいです。知らんけど。

3年春休み

ロボコンがオフシーズンに入り、下級生の講習をしていました。やはり自分の好きなことを人に教えるのって楽しいですね。
このころスペインから過去のロボコンに出場したロボットの実演を番組でやってほしいとの依頼があり、人生初ヨーロッパあつすぎ、と思っていましたがコロナがやってきて企画は消滅しました。ふざけんな。

春休み後半になってそろそろ編入対策しないとな、と思い数学の参考書を買ってのんびり進めていました。テストを短期記憶でしのいでいたので復習の連続でした。

このころはおそらく1日3~4時間しかやっていません。

4年春

コロナの混乱があって授業開始が遅れ、5月ごろに遠隔授業が始まりました。遠隔授業だとどうしても課題が多くなってしまうのですが、私は課題にアホほど時間を使ってしまいました。実験のレポートは言うまでもないですが、システム設計製作という授業で自分の好きなものをモデリングするという課題があり、私は春休みに親が買ってきた雑誌の付録、トイレコードメーカー(トイレではありません)をチョイスし2週間以上それだけに費やしてしまいました。本当に楽しかったので後悔はしていません。

とはいえさすがに何もしていないわけではなく、全国の編入を受け入れている大学を調べては募集要項をダウンロードして、自分に合いそうな学科やコース、受験科目や例年の日程などを調べてリストにしました。このリストは自分だけでなく受験校に悩めるクラスメイトに選択肢を提供する情報源としても役に立ちました。

この時期の勉強時間はほぼ0です。

4年夏

課題が減ってきて受験勉強をする余裕が出てきました。ある程度参考書を進めたところで東大数学の過去問をやってみましたが5割に届きませんでした。このときはまあそんなもんか、と思っていましたが過去の体験記とか見ると普通にこの時期に7割とかとってるバケモンがいますよね。意味が分かりません。

7月中旬から、当時東大志望だったK君(彼の編入体験記はこちら)と毎日の勉強内容を記録するようにしました。人と進捗を共有するとモチベーション維持にもつながりますし、互いを刺激し合えます。志望校が同じでなくても、自分と同じくらい勉強を頑張ってくれそうな人を見つけられるといいかもしれません。正直彼がいてくれての合格みたいなところあります。盛ってないです。

このころの土日の使い方としては、9:00~18:00ごろまで数学(もちろんぶっ通しではありません)、以降寝るまで物理の読み物をこなしていました。ところがこれが失敗で、夜に読書をすると一時間くらいで意識が朦朧としてくるので全然頭に入りません。結局これを1か月以上続け、本当に効率の悪いことをしてしまいました。
”読むだけ”は寝る!これは常識です!同時並行で問題集などを解きましょう。

夏休みは授業開始が遅れた影響で1か月弱くらいに短縮されてしまったので、編入勢にとって貴重な長期休みもあっという間でした。しかもロボコンが名残惜しくて新入生講習を引き受けてしまったので進捗もそこまで産めませんでした。講習は楽しかったので問題なし。

4年秋~冬

数学の全範囲を一通りさらったので、東工大電通大、筑波大、東北大などの過去問を解いてみました。さすがに東大よりは解けましたが、全完はできませんでした。

12月にTwitterで開催されている編入数学コンテストに参加しました。当時5年生の現役高専生が問題を作っていたらしく、こんな人が高専にもいるのかと恐ろしくなりました。

コロナでTOEICが抽選制になり、一度外れましたが12月の受験資格をゲットしました。せっかく受けるならと2週間の強化期間を設けて対策しました。数学や物理を忘れてTOEICをやっているという罪悪感はありましたが努力の甲斐あって3年春の880から85点上がりました。前日にオンラインのIPテストがあり、そこでも965点をとれたので自信は結構ありました。

勉強時間は授業のある日は3~4時間、ない日は7~8時間くらいだったと思います。
このころまでは週1で何もしない日を作っていて、乃木坂ちゃんのライブビューイングとかも普通に見てました。私には携帯やゲーム機など娯楽を封印して集中するぞ!というよりはほどほどに楽しいこともやって勉強するときは切り替える、という方が性に合っています。

そういえば、この時期は大学入試を控えていた片割れ(双子の弟)と同じ部屋で勉強していました。彼が浪人してしまったのと私が寮から実家に戻ってきた都合上部屋を分けられなかったのもありましたが、明らかに私と勉強量が違うので常にプレッシャーを感じていました。自分ももっと頑張らないと、とも思わされましたが、同時に彼には追い付けないとも思いました。それくらい意識の差がありました。

4年春休み

本格的に過去問をやり始めました。東大は出題傾向が変わる前は数学が150分だったので、英数物を通してやるとかなり体力を消耗してしまいました。

3月に片割れの東大合格が決まり、少し焦りを感じました。受験が終わって幸せそうにしているのを見ていると羨ましくて仕方がなくなります。

春休みの終わりにZENPEN様とナレッジスター様による編入数学模試が開催されたので受けてみました。この模試はすごくて、順位や偏差値が受験者全体だけでなく志望大学別でも出るので、自分の立ち位置を知る絶好の機会です。私は東大志望者5人中3位だったので不安になりましたが、得点をよく見たら最後の大問を解いていませんでした。本番にやったら悔やんでも悔やみきれないミスです。まあ解いたとしても1位には及ばないと思いますが。

5年春

研究室に配属され卒業研究を始めました。平日は思ったより時間がなく、休日は無駄にできないと思い頑張りました。

東大は出願が早いので出願書類は4月頭には作り始めなければいけません。私は志望調査票の完成に2週間くらい使いました。この時期に勉強以外のことをやっているとすごく不安になりますが、大切なので慎重に考えました。

このころは平日の授業のない時間に問題集、休日はフルで過去問を解くという生活をしていました。

5年夏

最終的に東大の過去問は平成12年から令和3年までの分をすべてやりました。さまざまな問題に出会いましたが、昔の問題は時間を計ってやるよりじっくり考えた方がよかったかもしれないと思っています。「似たような問題やったことあるぞ!」(進研ゼミ)もそうですが、「これはあの問題と同じ要領で解けそうだ」と本番で言えるようになるには、同じ問題を何回もやったり時間に追われながら焦って解いたりするよりも、とにかく解ける問題のバラエティーを増やすことが最優先だと思います。私は直前になって数学の問題集を買い足したのですが、「え…何これ見たことない」という問題ばかりでした。過去問特訓も問題数は十分豊富なんですが、それでも問題集は何種類かあった方がよかったなと今更ながら思います。あくまで個人の意見ですが。

一週間前に電通大の試験があり、初戦だったこととすべり止めは失敗できないというプレッシャーで極度に緊張していましたが、こけなかったので良かったです。おそらく受かっただろうと思ったので、「全落ちしても電通大行ければいいか~」と少し気持ちが安らいでいました。研究室の先生の「よかったら入れてください、ぐらいの気持ちで気楽に頑張れ」という言葉を胸に本番に臨みました。

東大1次試験

前日にロボコンでよくしてもらった東工大生の先輩とカレーを食べました。もし東大に落ちたら化学を教えてもらう約束をしてくれました。電通大の前日にも片割れとご飯を食べたんですが、やはり受験の先輩に激励をもらうと沁みますね。

当日はかなり早く会場に入ったつもりでしたが普通に何人かいました。意識が高い。

試験は英語からでしたが、今年は易化しているなと感じました。文章に出てくる単語も難解なものは少なく、読みやすかったと思います。Zoom疲れの話は読んでいて面白かったです。体感8割。
英語はまあまあできたので昼休憩は家族にLINEしたりツイートしたりする余裕がありました。もし数物が先だったら私のメンタルはどうなっていたか…

続いて数学が始まり、初っ端の微分方程式の問題が解けなくて超絶焦りました。こんなこと言うのもよくないですが、微分方程式はほとんどの試験問題において点数源になるのでここができなかったというのがかなり痛手でした。今年のは難しかったよね???と思っていましたが、終わってから他の人に聞いてみたらそうでもないと言われてしまい悲しくなりました。他の問題もあまり手ごたえはなく、ギリギリ6割届くかな…という感じでした。

若干放心状態で物理がスタートしました。解ける解けない以前に問題数が異常に多かったです。分野がランダムな第3問も、20年分過去問をやったのに一度も見たことがなかった光学の問題でした。これは相当厳しい戦いになるなと思いましたが、光を複素指数関数で扱うのは高専の授業でやったので、かすかな記憶を頼りに書けるだけ書きました。6割はあるんじゃないかと思いました。

終わってからまた片割れと夕食をともにしました。できることはやり切ったのでご飯はもりもり食べられました。元からそんなに食べる方ではないですが。

合格発表まで

奈良に戻ってから合格発表までは、もし受かっていた時のために面接で話すことをまとめつつ、化学をやらないとと思ってTry ITの高校化学の動画を見ていました。あれだけわかりやすい授業動画を無料で見られるなんて、我々受験生はなんと恵まれているのでしょうか。私は化学の先生(五十嵐健悟さんという方らしいです)が時折挟むボケにすっかりはまってしまい、京大志望に切り替えたK君にも勧めたんですが、笑いのセンスがゆがんでいると言われました。おすすめの動画を下に挙げますので、私が間違っていないということを確かめさせてください。
※本来の目的以外の理由で動画を紹介してしまい申し訳ありません。トライさんの授業はどれも大変参考になりますので是非お試しください。

youtu.be

youtu.be

発表当日は午前の授業がなかったので、家で母と結果を見ました。電通大の発表が同日だったので、先にそちらを確認しました。無事合格だったので、その勢いで東大も見たら番号がありました。さすがに叫んでしまいました。すぐにツイートしたら2000もいいねがついてしまい、まだ1次だけど…と困惑していました。

急いで研究室の先生と面接練習をして、落ち着く暇もないまま再び東京に向かいました。周りから1次受かったんだから面接で落ちることなんてない、と言われまくっていたので(おそらく合格者全員言われていると思いますが)、私もそう思うようにしていましたが、どうしても落ちた時のことを考えてしまい、落ちたら化学勉強する気力なんて出ないよ…などと嘆いていました。

前日の夜は平常心を保つためにYouTubeを見て、早めに寝ました。ホテルは1次の時と同じところを取ったんですが、前より格段に新しい部屋だったので一瞬だけテンションが上がりました。

東大2次試験

私の面接は13:30からと遅く、ホテルのチェックアウトからかなり時間があったので図書館にでも行こうと思っていたんですが、いろいろあって1.5時間近くスーツで炎天下を歩き回り、昼食もギリギリの時間に食べに行ったのでマジで遅刻すると思いました。会場に着いたときはコンディションも最悪で、そのうえ買っていた飲み物が三ツ矢サイダーだったので、静まり返った待合室でプシィーッ!と鳴らしてしまって非常に恥ずかしい思いをしました。

面接で聞かれた内容は別のサイトに書くとして、雰囲気は思っていたより厳かな感じでした。面接官は10人くらいいましたが、私の場合質問をしてくれるのは2~3人でした。特に詰まったりはしませんでしたが、タイムキーパーの方がしきりに時間を確認していたので不安になりました。受かるな、という確信は持てませんでしたが落とされるようなことはしていないだろうと自分に言い聞かせて本郷キャンパスを後にしました。

合格発表・受験を終えて

面接から合格発表まで10日ありましたが、化学の勉強は全く手につかず、卒研を進めて過ごしていました。2次の発表は午後だったので勝手ながら学校を休ませていただき、緊張しながらオリンピックを見ていました。14:00になって結果を見たところ、機械系の合格者として番号がしっかり書いてありました。喜びというよりも安堵が大きいな、と思いながらツイートしました。

こうして私の受験は終わりました。いまだになぜ受かったのかよくわかりませんが、本番に強いタイプなのかもしれないと都合よく考えるようにしています。

ちなみに得点開示によると英語217/300、数学261/400、物理235/300でした。物理が予想よりだいぶ高くて驚きましたが、英語採点厳しくないですか…?驕ってしまいすみません。

未来の編入生に

私の意見ですが、旧帝大レベルを目指す受験生はまず東大を目標にするのがいいのではないかと思っています。受かったからって調子に乗るなと言われるのは承知の上で申しております。化学系学科所属ではないけど東北や九州、北海道など化学が試験科目に含まれる大学に行きたい方は話が別かもしれませんが、東大は出題範囲が決まっておらずどの分野もある程度やっておく必要がある(と思う)ので、おのずと他の大学の対策にもなります。目標を途中から下げるのは簡単ですが、上げるのはなかなか大変だと思うので検討してみてください。

あとは、3年で時間のある方、興味のある分野がある方は夏休みを無駄にしないでほしいです。私はロボットと戯れていたので偉そうなことは言えないですが、オープンキャンパスに行ったり大学の研究室を調べてみたりなんかすれば、いきなり受験勉強を始めるよりモチベーションが高まると思います。3年から勉強を始める猛者もいらっしゃるので結局は意識の持ちようですが…

 

体験記は以上です。読んでいただきありがとうございました。

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